2017年12月3日日曜日

誰でもアイデアのスーパーサイヤ人になれる

【アイデアを出すための弊害、アイデアリミッタ】
私は、学生の頃、アイデアをうまく形にできなかった。知識が少なく、自分の出すアイデアに自信がなかった。アイデアを出しても、経験が少なく、具体的な計画が立てられなかったこともある。そういったネガティブな体験は、挑戦的なアイデアを出すことを怯えさせた。「どうせ無理だろうな」「言うのが恥ずかしいな」というリミッタが心の中にできてしまった。そのため、教授の言うとおりに動いているのが楽だった。無難な研究で、しっかりと成果も出た。

博士を卒業して研究員になったとき、確かな知識と技術は身についていた。小さなアイデアもたくさんあった。それで論文を書いていける。しかし、挑戦的なアイデアはなかった。「世界初!」とか「世界一!」というアイデアは出なかった。出せなかった。「何をしたら世界初か?それは面白いのか?本当に実現できるのか?」自信がなかった。心の中のアイデアリミッタが邪魔をしていた。


【アイデアリミッタとなりうる三つの大きな要因】
  1. 年配者や経験者を尊敬して従順である
  2. アイデアは突然閃くものと認識している
  3. 知識と経験が不十分
1では、従う方が思考停止状態になり、仕事は楽だがアイデアを生めるようにならない。このような雰囲気でも、教授が優秀であれば結果は出る。じゃんじゃん出る。でも、創造性豊かな学生は育たないだろう。もし特許やアイデア重視の部署であれば、なんとしてでも避けたい雰囲気だ。例えそんな雰囲気にするつもりがなくても、自らの失敗体験から後輩や学生を大切に育てようとしたときにも陥りがち。「かわいい子には旅をさせよ」、失敗も育成である。

2は、漫画や映画では豆電球が頭の上にでるシーンだが、まずありえない。考えて考えて考えまくって、何か月もあれこれ考えて、調べまくって、いろんな人と議論しまくって、ようやく可能性が見えてくる程度である。その可能性が見えた瞬間だけを捉えれば、豆電球がピカーン状態だが、そこまで辿り着くプロセスは苦難で長い。面白いアイデアを出すには、グダグダ時間も貴重だ。

3では、アイデアが出ても夢物語で終わる。テレビのコメンテータやtwitterでよくある、専門的でない人がアーダコーダ言っている話である。確かにアイデアとしてはいいかもしれないが、計画が不十分で実現困難なことが多い。実際にやってみて理想と現実の乖離が大きいと、次のアイデアが出しにくくなったり、提案に自信がなくなってくる。


【どうしたらアイデアリミッタを外せる?】
海外に来てから、挑戦的なアイデアも気軽に出せるようになった。知識と経験が蓄積されたこともあるが、雰囲気が大きい。廊下のあちこちにホワイトボードがあって、学生同士が議論しあっている。どんな無謀なアイデアも全否定はされず、一旦は本気で考えてくれる(考察は全否定されることもある)。たまたますれ違った人と進捗を話したり、夢物語を話していくうちに、具体性が出てくることもある。

MITでは特に挑戦的なアイデアが喜ばれる。ちょっとした思い付きで話しても「それ面白いね。どうしたらいいかな?専門の知り合いがいるから紹介するよ」と、実現に向けて話が進んでいく。そういう雰囲気から自信を持てるようになった。実現可能性に関しては経験がものをいう。こればかりはMITとか関係ない。なるべく若いうちに、たくさん挑戦しておくのがいい。どこまで挑戦的な課題なら実現までもっていけるか、線引きができるようになる。大きな成果のための研究計画を上手く立てるには、たくさん挑戦してたくさん失敗するしかない。

良いアイデアを出すには、深く勉強する必要がある。浅い知識や経験で思いつくアイデアは、誰でも思いつくか、実現不可能だと思ったほうが良い。知識はアイデアを出すためのツールだ。ツールはたくさん持っていたほうが良い。画期的な成果を一度出すと、アドレナリンが出てくる。すごく楽しい。もっと大きな成果を出したくなる。そのためには、もっともっと考えないといけない。そして、もっともっともっと勉強が必要になる。





最初の勉強は苦痛かもしれない。でも、学会でフルボッコにされることで、やる気が出るときもある。

くそったれーーーッ!!!!

知識と経験がついて、小さくても実験結果としっかりと繋がったとき、ポジティブに歯車が回りだす。物事の本質も見えてくるだろう。なんとしてでも、どんな相手でも倒したくなってくる。

みんな!!オラに知識を可能な限りわけてくれ!

そうして、いろんなアイデアが出てくると、もう誰にも止められない。アイデアが挑戦的であればあるほど、勉強が楽しくて楽しくて仕方がない。

めちゃくちゃ、ワクワクすっぞ!!

一般的な研究者をサイヤ人とすると、アイデアリミットが外れた研究者はスーパーサイヤ人とでも言おうか。一度アイデアリミッタが外れると、あらゆる可能性が見えてくる。そうなると強い。雰囲気や教育次第で誰でもなれる。スーパーサイヤ人をたくさん育てたい。そんなラボ、めちゃ楽しそう♪

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