2017年9月3日日曜日

10年前の日本での就職活動体験談

10年前くらいにも日本で就職活動をしていた。当時は、リーマンショック直前で、大体行きたいところには行ける感じだった。私は、お金を稼げる金融と、好きな仕事ができる製造業を見ていた。

外資系金融のインターン用の面接では、ほとんど旧帝大出身だった。そんな足キリがあるんじゃないだろうか、と思うくらい明らかだった。理系文系問わず呼ばれており、面接に来る者は、例外なくアツイ。「第一原理計算を使った研究をしています」なんて誇らしく理系人が言おうものなら、すぐに「何の役に立つんですか?10秒で答えて」と文系人から帰ってくる。あぁ、このやり取りは同じじゃないか、理研と政治家のやりとりと。しかも、時間制限付き。ほんと暑苦しい。

そんな彼らも事前にしっかりと勉強している。グループミーティングでは、すぐに誰がリーダーをやるか、タイムキーパーをどうするか、サクサクとマニュアル通りに決まっていく。さすがだ。リーダーもしっかりと全員の意見を聞いてまとめている。世間の思う”できる”人たちがここに集まっているのだ。そうして、数社から内定を勝ち取った友人は、世界最凶のLB社からの内定をお断りをしていた。その後、そこは経営破綻した。最強のアナリストだ。こうして彼らは20代から、大企業にM&A提案をしてウン千万円を稼ぐのだ。

私は内資系金融のインターンにも参加した。様々な大学から参加しており、皆のほほんとしていた。質問内容も相手を気遣う優しいもので、意識高い系は少なかった。グループミーティングのマニュアルなんて誰も知らず、制限時間内にテーマに対する回答が出ることもなく、終わった。え、いいの?お客さんじゃないんですよ?同じ金融でも、こうまで雰囲気が違うものなのか。実際に内定をもらっているのは、ここで会わなかった人達なんだろうと思う。

金融は、給料はいいし仕事のやりがいがあるけど、世界は動かせないと思った。数か月後にリリースされる技術を伝えてM&Aを促進させ、社会に貢献する。つまり、すでにある技術を組み合わせる仕事であり、新しい技術を作る仕事ではないと感じた。私がやりたいのは、世界を変える仕事。人生は一度キリ。SONYやAppleのような仕事にかかわりたい。たとえ給料が金融系の半分でも。そうなると、自分で起業か、ベンチャー企業か大手の製造業への就職になる。

当時は日本には多数の電気メーカーがあった。しかし、ジョブフェアや説明会ではどこも同じ事ばかりを話している。たしかに、私が白物家電を買う際、何に優劣をつけていたんだろう?と思った。各社の違いがわからなかった。あぁ、そうか、全て人事による広報の話だからか。私が聞きたいのは、研究開発部署の中の話なのだ。いろいろ参加してみたが、説明会からは大した情報が得られない事が分かった。米国では一日がかりで面接し、食事会もあるので部署の雰囲気を掴むことができる。残念ながら、日本の就職面接のシステムでは、就職してみないと内部事情は良く掴めない感じだった(これは双方にとってデメリットではなかろうか?)。

次に、企業の研究者と話せる会に参加することにした。A社では「自由な雰囲気でのんびりと研究できる」と研究者が話していたが、製品としてブームの仕事内容だった。事業部や開発のコメントならそれでいいが、研究内容としては出遅れてないだろうか?B社では、製品になるかどうかわからない、研究段階のプロトタイプも見せてくれた。新しい技術開発の重要性が伝わってきた。C社は、新材料の開発に全力だった。研究費への割合が大きいのが特徴だった。研究者として、やりたいことは何でもできるだろう。そういった企業間の違いがようやく見えてきた。

最後に、研究所訪問に参加した。D社は、設備も雰囲気も素晴らしかったが、会社自体の体質が古かった。E社も、素晴らしい設備を持っていたが、研究の雰囲気が最悪だった。上司が全ての研究テーマを決め、若手の意見は採用しない。チームになっていない、と感じた。一方で、F社は、とても魅力的だった。若手でも社長の前で話せ、部署に億単位の研究予算を持ってこれる。なんともやりがいがありそうだった。博士やポスドクの採用にも熱心だった。

就職先を決めるのにダメだとはっきり言えるのは、ただ流行りにのること。10年前は電気・電力、5年前は財閥・自動車、そして今はAIなどの情報が人気。10年前に流行った電気・電力は今や経営難。財閥・自動車も今後どうなるか分からない。流行りに乗って就職すると、その分野の人口も多いだけに転職がしにくいことは、常に頭に入れておく必要がある。本当に好きならその道に進めばいい。でも、そうでないなら、一旦冷静になろう。

就活生は特別で、いろんな企業のことを知れる。あれから10年経って、残念ながら多くの製造メーカーの経営が悪化した。研究者の目線からすると、どこも新しいアイデアを積極的に取り入れていないか、体質が古いところばかりだ。さすがにビジネスのビの字も知らない学生が、どこの企業が今後大きく成長するかなんて読めない。同じ会社で長く働きたくても、ジョブフェアではわからない。企業が有名かどうかも関係ない。まだ四季報を読む方がいい。でもせめて、せっかく企業に就職するのだから、若い時からアイデア提案・グループ指揮などを経験できる場所がいいと思う。理系学生には、雰囲気や体質を直に知ることができるから、積極的に研究所訪問をすることをお勧めしたい。それに、新しい風を取り入れ、時代に合わせて常に変化し続けている企業は、比較的長く存続していると思う。

欧米のように、転職が多くても不安定でも構わないなら、常に自分が成長できる道を選ぶのがいいと思う。ステップアップしていけば、転職先がどんどん広がるからだ。家族を安定して食べさせていくには、終身雇用とステップアップ、の二つがある。どちらも良いシステムで、どちらが自分に合うあうかは人ぞれぞれ。みんな、良い道を選んでほしいと思う。一緒に頑張りましょう!

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