2017年5月4日木曜日

教わる側の姿勢

【高校と大学の違い】
多くの高校や予備校は、大学受験に向けた授業をしており、テストに出てくる問いには必ず解答が存在します。生徒は、与えられた問題から、正確に早く解答を出すことを求められ、高校の良い授業というのはそのスキルを直接的に教えてくれる授業になるでしょう。問題形式に沿って、「こういう問題はこう解く」と言うように、解き方をシンプルに教えてくれる先生が良い先生ではないでしょうか?生徒は、考えることよりも知識量が大事になってきます。

より高等な教育である大学では、問いに対して必ずしも解答は存在しません。どうして遅刻したの?どうやったら売れるの?一般社会には解答なんて一つではなく、答えは人それぞれ。したがって、「こうしたら売れるよ」と、解き方を教えてくれる授業が決して良い授業とは限りません。ものを売る方法なんて無限あり、そのうちの何個かを教えられても、社会に出たら使えないからです。良い授業というのは、「売る方法をどうやって考えたらいいか」をサポートしてくれるような授業ではないでしょうか?学生は、知識よりも考え方を身につけることが大事になってきます。

(例:魚釣り)
 問:魚を捕まえるにはどうしたらいいか?
 解答A:魚のいるところに行って捕まえる
高校の問題は、このように、問いに対して解答が一つだけ存在します。それ以外は間違いです。

大学では、更に深く追求されます。
 解答B:魚のいるところにいって、投げ入れた網の中に魚を捕らえて、引き上げる
というのが、一つの答えです。もちろん、他にもいくらでも答えはあります。確かに、ノートを写しているだけの学生なら、「網を使えば良いんだ」と分かったような気になって、いい授業だと思い込むかもしれません。しかし、そのまま卒業して漁師になり、先輩に同じことを聞かれたら、解答Bしか答えられないでしょう。解答Bだけでも答えられるのだから、まじめに授業を受けた優等生なのかもしれません。でも、実際にやってみて、本当に網で魚を捕まえられるのでしょうか?捕まえられなかったときはどうするのでしょうか?そこですぐにお手上げになれば、大学で習ったのは一体何だったのでしょうか?

本来、本質を追求し、考え方を身につけるのが大学です。大学の良い授業というのは「魚には習性があるんだよ」といった間接的なアドバイスだけで、答えまでは教えないことです。習性を利用したいろんな釣り方を思いつく学生が、優秀な学生といえるでしょう。大学で得たことを就職後にも生かしたいなら、授業で常に頭を使って、式の意味や授業内容の本質を掴むべきです。そこが高校との違いです。頭を使わない学生にとっては、「魚に習性があっても釣ることとどう関係があるの、わかりにくい」と感じ、ひどい先生だと烙印を押してしまうかもしれません。とてももったいない限りです。考え方さえ身に就けば、魚の育て方や食べ方にも応用できるかもしれないのに。知識だけなら、わざわざ大学に行かなくても調べればつけられます。

大学では学部によって方針が違います。理学では、本質(魚の習性)をとことん追求します。魚はエサの形を見て近づくのか、匂いで近づくのか。どの距離までなら反応できて、エサの動きにはどの程度敏感か。温度が高いときと低いときで、生息場所が変わるか、など。工学では、原理をいかに応用するかが求められます。形だけに敏感なら、疑似エサでもいいのではないか(ルアーフィッシング)。それに匂いもつけてみよう、形も変えてみよう、動き方も変えてみよう(フライフィッシング)、など。

理学にいても、魚の習性を深く知れるだけで、釣れるようにはならないでしょう。しかし、画期的な習性がわかり、工学と共同すると業界が大きく発展します。例えば、「鮎には共食いの習性がある!」というのを理学の人が発見したら、「鮎は鮎をエサにすればいいんだ」と工学の人が発展させることで、鮎がバンバン釣れるようになるわけです。結果、共食いを発見した人はノーベル賞がもらえ、共食い技を見つけた人は、企業から引っ張りだこになります。


【教える側と教わる側の姿勢】
(教員側)教養のある人が、考え方を意識して教えれば、学生は育ち、知識や技術が社会で更新されていくはずです。解答を全て見せるのではなく、学生が少し分からないくらいが良いかもしれません。教員にとっては、アドバイスの的確性が重要になります。それは学生のバックグラウンドに依存するので、良い授業をするには、学部や大学が変われば教え方も変わるはずです。その方法はpptであっても黒板であっても実験であっても良いはずです。

(学生側)人は、うんうん唸って調べて考えたことは、長く覚えていますが、簡単に知識として取り入れたものはすぐに忘れてしまいます。単位をくれる授業、分かった気にさせてくれる授業もいいですが、自分のレベルよりも少し高い授業(良い授業)も是非探してみてください。知識自体が使えなくても、その授業で習った考え方が、就職先で生かされるかもしれません。良い授業が見つかれば、先生を尊重し、常に頭を使って聴いてみてください。

インプットを重視して、ただノートを写して知識を蓄えているだけでは、応用が利かない、アウトプットができない、ただの優等生で終わります。入門書を読みきって、その分野を全て理解したと思っていませんか?式の意味や物事の現象を自分の言葉で説明できますか?テレビのコメンテータやネットのコメントの通り話しているようでは、ただの情報通ですよ。政治家を批判するだけじゃなくて、自分で考えた反対案も出せますか?欧米の良いところを取り上げるのはいいですが、日本の良さも把握していますか?知識や技術は蓄えるものではなく、考える際に使う道具です

教える側と教わる側の姿勢次第で、見方・生き方が変わるんじゃないでしょうか?良い授業を見つけ、よい考え方を身につけた学生は、きっと将来を迷わないはず。

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